「ダラケ!」で喋ったゲイ専門ライターに不快感を覚えた件

ゲイ専門ライター3名が出演したBSスカパーのバラエティ番組「ダラケ!」。肛門クイズを始めゲスい番組内容には賛否両論(”否”が多めですが)。しかし、元ゲイ雑誌編集長の私は、違う観点からこの「ダラケ!」と出演したゲイ専門ライターに「否」を叩きつけます。
テーマは「当事者感覚ないが故の愛情の欠如が引き起こした不快感」です。

まずは番組の内容と賛否の声をご紹介

2016年11月24日にBSスカパー(スカパーのおまけチャンネル:BSスカパーのチャンネルを契約すると無料で見られる)のバラエティ番組「ダラケ!〜お金を払ってでも見たいクイズ」で「ゲイ専門ライター特集」が放送されました。

番組に出演した「ゲイ専門ライター」は
・竜超氏(「薔薇族」編集長)
・HIRO氏(月刊「バディ」編集長)
サムソン高橋
のお三方。

どんな番組かというと

https://twitter.com/sptv_darake/status/800254859177959424?lang=ja

https://twitter.com/sptv_darake/status/800669144567816192?lang=ja

この「肛門クイズ」が放送されるというツイートが公式アカウントから呟かれるや、ツイッター上では番組に対する批判の声が巻き起こりました。
その一部をご紹介します。

もちろん否定ばかりではなく、番組を肯定している人もいます。

大体の番組内容と、賛否両論の声があることはお分かりいただけましたでしょうか?

 

当事者感覚ないが故の愛情の欠如が引き起こした不快感

この番組(つまり制作スタッフ)と、出演したゲイ専門ライターからは「当事者感覚のなさ」しか感じられず、最後まで見続けるのは正直、かなりキツかったです。
では、まずは「当事者感覚」とは何なのかをご説明しましょう。

ゲイ雑誌の編集を20年間やってきたものですから、ご説明しやすい雑誌に関係する例を使います。

ポルノグラフィーと言われるアダルト漫画では、描き手と描く対象の距離が遠い方が、より凄惨な描写をしやすくなる傾向があります。

例えば、ノンケ男性が描くアダルト漫画全般、中でもロリコン陵辱系の漫画は特に凄惨ですよね。
また、ノンケ女性が描くレディースコミックでの男性描写、中でもM男君はとりわけ凄惨な描き方をされます。

ノンケ男性にとっても、ノンケ女性にとっても、凄惨な描き方をする対象は自分とは全く別の存在であるからこそ、どんなに酷い目に遭わせたとしても心は痛まないのです。

ところが、ゲイがゲイを描く場合、突き放して描く事が出来ない傾向が強いのです。酷い目に遭わせているようでありながら、どこか描写に手ぬるさが感じられます。

これは描く対象が同じセクシュアリティであるからなのです。突き放して凄惨な描写をしてしまうと、描き手の心が痛むのです。

これこそが「当事者感覚」です。
当事者感覚があれば、胸が痛むのです。

 

①当事者じゃないからこそ考え出せた「肛門クイズ」

番組に出演したサムソン高橋氏によると、事前にスタッフと2回打ち合わせをしているとのこと。さらに制作スタッフは「ノンケ」という言葉も知らないほど、ゲイに関しての知識はほぼゼロに近かったそうです。

SNS上で否定意見が続出したのは「肛門クイズ」。
これぞ、まさに制作スタッフの「知識のなさ」と「当事者感覚のなさ」によって生み出された産物です。

まず制作スタッフがゲイであれば、ケツ割れ(股間部だけを隠したサポーター)のみを着用した男を並べて、ケツの穴を見てゲイかノンケかを当てるクイズ、というコンセプト自体考えつかないでしょう。
なぜなら、よっぽどディープな使い方をしている人じゃない限り、見ただけで分かるほど肛門の形状は変わらないということはゲイ当事者なら分かるからです。
そして、ゲイが嬉々として男の尻穴を覗き込んでいる姿をTVで晒すことに、同じゲイとしての尊厳を傷つけられたと胸を痛める当事者が一定数以上いることは容易に想像できるからです。

ゲイ=アナル・セックス→肛門見ればゲイかノンケか分かるはず

このあまりにもくだらない連想を「笑えるから有り」と考えるのは、ゲイとは距離のあるノンケだからこそ。
そりゃあ、ノンケなら笑えるでしょう、胸が痛むはずなどありません。
もちろん、嬉々としてTVカメラの前で尻を覗き込んでいたゲイ専門ライターたちと同じく、この状況でも胸が痛むことなく笑って見ていられる心の強いゲイ当事者がいることは、決して否定はしません。

 

②当事者なのに欠如していた「当事者感覚」

ゲイではない制作スタッフに「当事者感覚」が欠如していたのはある意味当然なのかもしれませんが、愕然としたのは出演しているゲイ専門ライターにも「当事者感覚」が欠如していたことです。

まず、番組では彼らの事を

男が男を愛する世界を知り尽くしたゲイ専門ライター

と紹介しています。
彼らが本当にゲイの世界を知り尽くしているのかどうかは別として、TVを見ている人には、「その筋の権威」として箔づけされているわけです。
つまり、見る側にとっては、彼らの発言は間違いのない真実だと認識されるのです。

その前提の上で、彼らは同じ当事者のオープンにされたくないであろう情報をペラペラと楽しそうに喋りまくります。

まず一つは、「ゲイの定番アイテムといえば何でしょう?」というクイズ形式のコーナーで、一部のゲイの間でここ数年流行しているカバンを紹介しました。
ちょっと変わった形状をしているこのカバンは目立つし、印象に残ります。
定番アイテムというくらいですから、実際に使っている当事者が多いのは事実です。

このカバンを使っているゲイだと周囲には公言していない当事者にとって、たまったものではないですね。たとえ使いやすくてお気に入りだったとしても、使いづらくなったと感じる人は少なくないでしょう。
それで済めばまだいい方です。
何せ印象に残る形状のカバンですから、これを愛用していたことで周囲から「ゲイ疑惑」を抱かれてしまう人が出てくる可能性も決して少なくない、という状況は想像もしなかったのでしょうか?

これを喋ったHIRO氏は、多分このカバンを使っていないのでしょう。
画面の中で喋る口調からは、ゲイ当事者でありながら、このカバンを使っている人たちに対する距離の遠さばかりが感じられました。

 

これ以上に噴飯モノだったのは、「30代のゲイが集まるスポットの定番は」というクイズで、新宿二丁目以外のゲイバーが集まる某エリアを3人ともが喋ってしまったことです。

ゲイバーが集まるエリアとしてあまりにも有名になりすぎた新宿二丁目と、それ以外でゲイバーが集まるエリアでは大きな違いがあります。

新宿二丁目以外のエリアのゲイバーやそこに通うお客さんの多くは、当事者以外に知られたくないという気持ちが強いのです。

僕は32年前から東京のゲイバーに通っていますが、若い頃から新宿二丁目が中心でした。ところが30歳からゲイ雑誌の仕事を始め、二丁目以外のエリアにも取材やプライベートで行くようになり、感覚の違いを実感するようになったのです。

二丁目以外のエリアで飲んでいる人と話していて、僕は日頃は二丁目で飲むことが多いです、と話すと
「新宿二丁目はあまりにも有名すぎて行きづらい」
「二丁目はノンケもたくさん行く街だから仕事関係の人に会ったらマズい」
というようなことを色々な人から言われました。

ゲイであることを公言していない人にとっては、仕事関係の人などには秘密にすることが大鉄則なわけですからこれは当然のことです。
二丁目以外のエリアでゲイバーを経営している方々もお客さんの気持ちはよく分かっているからこそ、TVなどに露出される例が極端に少ないのです。

特に今回3人が喋ったエリアは、当事者以外には知られたくないという意識が強いところです。数年前にとある局の深夜番組で取り上げようとしたものの、取材協力してくれる店が1軒もなく企画が成立しなかったほどに。

ゲイ専門ライターとして番組に登場して、ペラペラ喋ってしまった3人は、このエリアに飲みに行くことがほとんどないのだと思います。
通っていれば、飲みにくる人の気持ち、店を経営する人の気持ちが分からないはずがありません。

ゲイ当事者でありながらもこのエリアにおいては当事者じゃないからこそ、気軽に喋れてしまったのでしょう。

 

③芸能人ならアウティングしても構わないのか?

この記事を書いている最中、FRIDAYでのスクープされたことを理由に、成宮寛貴氏の芸能界引退が発表されました。

成宮氏の直筆コメントの中に

この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分もクローズアップされてしまい

という一文があります。

一部のオネエタレントなどを除いては、日本の芸能界ではセクシュアル・マイノリティが自分のセクシュアリティを公言することはタブーなのです。
それの是非は置いておくとして、そういう現状にもかかわらず、

男が男を愛する世界を知り尽くしたゲイ専門ライター

という肩書きでイニシャル・トークとはいえ、芸能人の噂話を嬉々として話す姿を見るのは本当に辛かったです。

これがアウティングだという意識はなかったのでしょうね。
芸能人だから何を言っても大丈夫と考えているのでしょうか?

成宮氏のコメントからも明らかなように、芸能人だって傷つきます。
特に、同じ当事者からアウティングされたら、その傷はとても深いのではないでしょうか?

 

ゲイバーで飲み始めた若い頃、よく年上の人が
「ホモの敵はホモだから」
と言っているのを耳にしました。

それがどういう意味なのかよーく理解できたのが、当事者感覚のなさが充満して対象への愛情の欠如ばかりが目立ったこの番組です。

当事者感覚のないノンケの制作スタッフからすれば、「ゲイネタ」は簡単に笑いが取れるという認識でしょうから、今後も同じような番組は作られ続けるでしょう。
それを考えると、ゲンナリするばかりです。

 

About itaru 24 Articles
元・月刊Gーmen編集長。LGBTQI(セクシャル・マイノリティ)に関わる様々な事柄を取材・分析して、誰でも分かりやすい平易な言葉でお伝えしていくことを使命と感じています。

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