エリート・ゲイ集団写真に秘められた思惑を推測してみた

昨晩(20161年10月23日)、写真家のレスリー・キー氏が呟いた上記のツイート。
見た瞬間に予想した通りの人たちが、予想通りの批判ツイートを呟いている。
※2016年10月28日(金)17:00現在、上記のツイートは削除されています。

もちろん、表現したものに関して賛否が起きるのは当たり前のことであり、批判するのは構わない。ただ、予想した通りの人が、予想通りの批判をしている、という状況を見てちょっと考えてしまったことがあるので、この記事を書いてみたくなったのです。

 

OUT IN JAPANに関する基礎知識

まず、この写真が「OUT IN JAPAN」という企画の一環として撮影されたものである、というところから始めましょう。OUT IN JAPANに関してよ〜〜くご存知の方は、この項は飛ばしてください。

「OUT IN JAPAN」はどういう企画なのか? OUT IN JAPA公式サイトより引用してみよう。

「OUT IN JAPAN」とは、日本のLGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティにスポットライトを当て、市井の人々を含む多彩なポートレートを様々なフォトグラファーが撮影し、5年間で10,000人のギャラリーを目指すプロジェクトです。個人、団体、企業、自治体等との連携を通して、WEBサイト・展覧会・写真集などを展開し、身近な存在としてのセクシュアル・マイノリティを可視化させ、正しい知識や理解を広げるきっかけとしていきます。

ということで、レスリー・キー氏が一年間に渡り9回の撮影会で1000人のポートレートを撮影してきました。

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※第25回レインボーリール東京にて撮影

2016年7月開催の第25回レインボーリール東京では、1000人分のポートレートが一挙に展示され、なかなか壮観でありました。
9月に開催された「第4回なら国際映画祭2016」でも、奈良市内各所に展示されました。

参考記事:LGBT&アライが”なら国際映画祭2016”に注目すべき理由

今回発表されたエリート・ゲイ集団の写真は、この企画の一環として撮影されたもののようです。

 

エリート・ゲイ集団写真になぜムカつくのだろう?

今回の写真に登場した16人のゲイは
・ゴールドマンサックス
・IBM
・グーグル
・Apple
・電通
・三井住友(⬅︎銀行?信託銀行?海上?等は現時点では不明)
の社員の方です。

見るからに高学歴、高収入で見栄えも悪くないスマートな男たちが「エリート」という括りで登場すれば、そりゃあ反感を抱き、何か文句を言わなければ気が済まない人はいるでしょう。登場した方たちも、一部に反感を抱かれることは当然分かっているでしょう。写真を拝見する限り、「そんな批判されるなんて思いもしなかった」という無邪気さをお持ちの方々とはとてもお見受けできませんから。その手の批判にさらされ続けている「OUT IN JAPAN」の中心メンバーである松中権氏自ら登場なさっていることからも、批判されるのは想定内だとお考えなのは明らかでしょう。

「OUT IN JAPAN」自体が、学歴とか職業とか年齢とか容姿などのある種のフィルターをかけたセクシャル・マイノリティのみしか出られない企画であるならば、そこは批判が生じるのは当たり前だと思います。しかし、これは参加したいと意思表示した人は基本的に誰でも出られる企画です。今まで撮影済みの1000人を見ると、実に様々な人がいます。

僕も6回目の撮影会に参加させてもらいましたが、応募されて集まった方々は実に幅が広く、そこがとても心地よく、かつ面白かったのです。

今回発表されたエリート・ゲイの写真を見た時に、色々なセクシャル・マイノリティが登場している企画なのだから、こういう括りの集団が登場するのも面白いな、と素直に感じました。

 

自分のセクシャリティを、社会に向けて公言するか否か。

僕は、公言するのも自由だし、公言しないのも自由だという考えです。

だから、公言している人がそうではない人に公言することを強要することは許さないです。
同じく、公言していない人が公言している人を妨害したり足を引っ張ろうとすることも許しません。

このスタンスである僕からすると、

ゲイであることを隠さざるをえなかった一流企業に務めるエリートたちが、社会に向けて公言した

という一点だけでも、この写真は評価すべきだと考えるのです。

OUT IN JAPANのポートレート群の中に一個人として登場して埋もれてしまうのではなく、集団として登場することで与えるインパクトの大きさは、当然計算されているでしょう。またエリートを自称する人へ向けた嫉妬が生み出す単純なムカつき以外にも

「ほとんどが外資系の企業」
「エリートといって出てくるのはゲイだけ」

などといった批判もあると思います。

実際、セクシャルマイノリティに対して理解のない企業に勤める人や、公務員の人で、自分のセクシャリティは絶対公言できないと考えている割合は非常に高いです。そのために会社ではストレートを装い、私生活をひたすら隠して窮屈な思いをせざるをえない人も少なくないでしょう。

でも、会社員でも公務員でも、セクシャリティを公言したい人はそれができる社会になって欲しいと、僕は考えています。

だから僕は、この写真に収まった人たちは先駆者たちなのだ、と捉えています。

この写真一枚が、セクシャル・マイノリティのエリートのすべてではありません。もっと色々なセクシャリティで、様々な職種についている人はたくさんいるでしょう。その中で、自分のセクシャリティを公言して生きていきたいと願いながらもその術がなかった人にとって、この先駆者たちの写真が与える力はとても大きいと思います。

そして、この先駆者に続く人たちがたくさん現れてきたら、それはセクシャル・マイノリティの子供達に希望を与えることにもなると考えます。
思い出してください、あなたが10代だった頃のことを。まだ何者にもなっていない時期に、セクシャル・マイノリティであることを自覚してしまい自分の将来像を描けずに絶望したことはありませんか?
僕が10代の頃に、ゲイだと公言してメディアに出ている人は「おすぎとピーコ」「美輪明宏」「カルーセル麻紀」くらいしかいなくて、その誰にも自分の将来図を重ねることができず困惑していたことを、最近、北丸雄二さんにインタビューしている時に思い出しました。
今だって、メディアに出ているオネエ・タレントには自分の将来図を重ねることができない子供たちはたくさんいるでしょう。今回のエリート・ゲイ集団の写真がきっかけになって、様々なセクシャリティ、性別、職業の方たちが、自分たちのセクシャリティを公言するようになったら、セクシャル・マイノリティの子供たちが自分の将来図を描く希望につながると思いませんか?

 

この写真に収まっているエリート・ゲイの方々は、想定内の批判にさらされることは織り込み済みで、道無き道を開拓していく決意をされているのだなと、僕は考えています。そして彼らに続く人たちが現れることを、大いに期待しています。

 

About itaru 24 Articles
元・月刊Gーmen編集長。LGBTQI(セクシャル・マイノリティ)に関わる様々な事柄を取材・分析して、誰でも分かりやすい平易な言葉でお伝えしていくことを使命と感じています。

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